週刊徒然草

〜 ご隠居はんとありおーの徒然草 〜

 

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第百九十三段 くらき人の、人を測りて
 くらき人の、人を測(ハカ)りて、その智(チ)を知れりと思はん、さらに当(アタ)
 るべからず。
 
 拙(ツタナ)き人の、碁(ゴ)打つ事ばかりにさとく、巧(タク)みなるは、賢(カシ
 コ)き人の、この芸におろかなるを見て、己(オノ)れが智に及ばずと定めて、万(ヨ
 ロヅ)の道の匠(タクミ)、我が道を人の知らざるを見て、己れすぐれたりと思はん
 事、大きなる誤りなるべし。文字(モンジ)の法師、暗証(アンシヨウ)の禅師(ゼン
 ジ)、互(タガ)ひに測りて、己れに如(シ)かずと思へる、共に当(アタ)らず。
 
 己れが境界(キヤウガイ)にあらざるものをば、争(アラソ)ふべからず、是非すべか
 らず。
 
 ※
 ばか者が、人を推し量って、その能力の程度を知ろうとしても、わかりっこない。
 
 愚か者のくせに、碁だけは理解し、上手だからと言って、教養はあるが、碁が下手な人
 を見て、自分より劣っていると決めつけたり、あらゆる分野の専門家が、自分の分野に
 ついて人が詳しくないのを見て、自分の方が優れていると思うなんてことは、大きな間
 違いだ。読経ばかりの僧と座禅ばかりの僧が、互いを評して、自分より劣っていると
 思ったのなら、どちらも何も理解していない。
 
 自分と違う分野の人と、比べてはならない、優劣をつけてはならない。
 
 ※
 「ご隠居はん、エリート意識というやつですかね。」
 「あぁ...そこまで飛びますか。」
 「違うのですか。」
 「それは、優越する気持ちの出方でしょ。例えば、他人を見下すのではなく、責任感を
 感じるべきってことでしょう。」
 「はぁ。」
 「この段はそこまで言ってないのではないかな。単に自分と他者を理解しなさいと、そ
 の程度ではないかな。」
 「ふむ、なるほど。人を一面で理解するな、ですか。」
2010/03/13(Sat)

第百九十二段 神・仏にも
 神(カミ)・仏(ホトケ)にも、人の詣(マウ)でぬ日、夜(ヨル)参りたる、よし。
 
 ※
 神や仏に、人が詣でない日や夜お参りするのも、いいものだね。
 
 ※
 「ご隠居はん、よく分かる話です。雰囲気が違いますからね。縁日の騒々しいのもいい
 ですけれど、静まり返っているのも格別です。」
 「ふ〜ん」
2010/03/07(Sun)

第百九十一段 夜に入りて、物の映えなし
 「夜(ヨ)に入りて、物の映(ハ)えなし」といふ人、いと口をし。万のものの綺羅
 (キラ)・飾(カザ)り・色ふしも、夜(ヨル)のみこそめでたけれ。昼は、ことそ
 ぎ、およすけたる姿(スガタ)にてもありなん。夜は、きらゝかに、花やかなる装束
 (シヤウゾク)、いとよし。人の気色(ケシキ)も、夜の火影(ホカゲ)ぞ、よきはよ
 く、物言ひたる声も、暗くて聞きたる、用意ある、心にくし。匂(ニホ)ひも、ものの
 音(ネ)も、たゞ、夜ぞひときはめでたき。
 
 さして殊(コト)なる事なき夜、うち更(フ)けて参れる人の、清げなるさましたる、
 いとよし。若きどち、心止(トド)めて見る人は、時をも分(ワ)かぬものならば、殊
 に、うち解(ト)けぬべき折節(ヲリフシ)ぞ、褻(ケ)・晴(ハレ)なくひきつくろ
 はまほしき。よき男(ヲトコ)の、日暮(グ)れてゆするし、女(ヲンナ)も、夜更く
 る程に、すべりつゝ、鏡(カガミ)取りて、顔などつくろひて出づるこそ、をかしけ
 れ。
 
 ※
 「夜になると、物が映えない」という人が居るけれど、違うよね。物の華やかさ・飾
 り・色合いも、夜こそ引き立つんだ。昼だと、簡素で、目立たなくてもいいじゃない。
 夜には、きらびやかで、華やかな装いが、いいと思う。人の姿も、夜の火影で、いい感
 じに見えるし、話し声だって、暗い中で聞く方が、思いがよく伝わって、いいものだ。
 香りも、音楽も、とにかく、夜の方が際立ってくる。
 
 なんて事も無い夜、遅くになってやって来る人の、清らかな姿も、いいものだね。若い
 者同志が、気になって姿を追い掛けたりするのは、時間に関係が無いから、特に、打ち
 融け合いそうな頃には、常に身だしなみには気をつけておくべきだね。いい男が、日が
 暮れてから髪を整えたり、女も、夜が更けてから、席をはずし、鏡を取って、化粧を直
 して戻ってくるというのが、いいのだよな。
 
 ※
 「ご隠居はん、備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖。注意一秒怪我一生。」
 「いつにもまして、なにをゆうとるんや。」
 「インターホンが鳴るので出てみたら、かわいい女の子が立っていた。ちゃんとした格
 好で出れば良かったなぁと後悔するのもつかの間、差し出されたものに目を止めると、
 宗教の勧誘だった。なんだかなぁ。」
 「ほんま、何ゆうとるんや。そんな事はえぇから、はよ本題に。」
 「はい。では。
 昔に比べると、季節感も弱くなりましたけど、時間の違いも随分感じません。」
 「文明のせいやな。」
 「何時だって明るいから、格好がだらしなくなるのでしょうか。」
 「あれは、好みの問題だからね。とは言っても目立っちゃったからね。」
 「はぁ。」
2010/02/27(Sat)

第百九十段 妻といふものこそ
 妻(メ)といふものこそ、男(ヲノコ)の持つまじきものなれ。「いつも独(ヒト)り
 住(ズ)みにて」など聞くこそ、心にくけれ、「誰(タレ)がしが婿(ムコ)に成り
 ぬ」とも、また、「如何なる女(ヲンナ)を取り据ゑて、相(アヒ)住む」など聞きつ
 れば、無下(ムゲ)に心劣りせらるゝわざなり。殊(コト)なる事なき女をよしと思ひ
 定めてこそ添(ソ)ひゐたらめと、苟(イヤ)しくも推(オ)し測(ハカ)られ、よき
 女ならば、らうたくしてぞ、あが仏(ホトケ)と守りゐたらむ。たとへば、さばかりに
 こそと覚えぬべし。まして、家の内(ウチ)を行(オコナ)ひ治めたる女、いと口惜
 (クチヲ)し。子など出(イ)で来て、かしづき愛したる、心憂(ウ)し。男なくなり
 て後、尼(アマ)になりて年寄りたるありさま、亡(ナ)き跡まであさまし。
 
 いかなる女なりとも、明暮添(アケクレソ)ひ見んには、いと心づきなく、憎(ニク)
 かりなん。女のためも、半空(ナカゾラ)にこそならめ。よそながら時々通ひ住(ス)
 まんこそ、年月経(ヘ)ても絶えぬ仲らひともならめ。あからさまに来て、泊(トマ)
 り居(ヰ)などせんは、珍らしかりぬべし。
 
 ※
 妻というものこそ、男は持つべきではない。「ずっと一人住まいでして」なんて聞く
 と、あっぱれ、「誰それの婿になりまして」とか、また、「こういう女を連れて来て、
 一緒に住んでるんだ」なんて聞くと、とにかくがっかりさせられる。どうってことない
 女をいいと思い込んで一緒に居るのだろう、なんて邪推したり、いい女だったら、可愛
 い可愛いと、お姫様扱いしているんだろう。例えてみれば、こんなもんだと想像でき
 る。まして、家庭を切盛りする女なんて、どうしようもない。子供ができて、大切に愛
 してる、見てられないよ。男が亡くなった後、尼になって年をとった姿なんて、みっと
 もない。
 
 どんな女であっても、明けても暮れても顔を合わせていると、うんざりしてきて、嫌に
 なる。女のほうだって、どうしようもないだろう。よそから時々通って来る方が、年月
 が経っても飽きが来ない仲なんじゃないか。突然やって来て、泊ってゆくなんてのが、
 新鮮でいいんじゃないかな。
 
 ※
 「ご隠居はん、長い前置きですね〜。どんな立派な話なのかと思えば。」
 「自己正当化じゃな。」
 「あ...そうか。独身でいる言い訳に、これは使える。」
 「どこで使うんや...。」
2010/02/20(Sat)

第百八十九段 今日はその事をなさんと思へど
 今日(ケフ)はその事をなさんと思へど、あらぬ急ぎ先(マ)づ出で来て紛(マギ)れ
 暮し、待つ人は障(サハ)りありて、頼めぬ人は来たり。頼みたる方の事は違(タガ)
 ひて、思ひ寄らぬ道ばかりは叶(カナ)ひぬ。煩(ワヅラ)はしかりつる事はことなく
 て、易(ヤス)かるべき事はいと心苦し。日々(ヒビ)に過ぎ行くさま、予(カネ)て
 思ひつるには似ず。一年(ヒトトセ)の中(ウチ)もかくの如し。一生の間(アヒダ)
 もしかなり。
 
 予(カネ)てのあらまし、皆違ひ行くかと思ふに、おのづから、違はぬ事もあれば、い
 よいよ、物は定め難し。不定(フシヤウ)と心得ぬるのみ、実(マコト)にて違はず。
 
 ※
 今日はあれをするぞと思っていても、思わぬ急用に振り回され、待っていた人は来ず
 に、頼みもしない人がやって来る。願っていた方の事は実現できず、思ってもいなかっ
 た事ばかり叶う。面倒だなと思っていた事は何の支障もなく、簡単だと思っていた事の
 ほうが難しかったり。日々の暮らしと言うのは、予め思っているようにはいかないもの
 だ。一年を振り返るとこんな感じ。一生だって同じなんだな。
 
 予想したことが、全て裏返しになるのかと思うと、たまたま、違わない事もあるから、
 ますます、予測はできないな。定めはないと思っておけば、間違いない。
 
 ※
 「ご隠居はん、あたりまえじゃないですか。」
 「いやいや、”当たり前だと思った事がそうではない。”って話だよ。」
 「あ、そうか。そうか?」
 「結果は分からないのだから常に用心し努力しなさいと。」
 「そうなのかなぁ。単に徒然しすぎのような気がしますけど...。」
2010/02/07(Sun)

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