週刊徒然草

〜 ご隠居はんとありおーの徒然草 〜

 

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第百九十八段 揚名介に限らず
 揚名介(ヤウメイノスケ)に限らず、揚名目(ヤウメイノサクワン)といふものあり。
 政治要略(セイジエウリヤク)にあり。
 
 ※
 揚名介だけではなく、揚名目という役職もある。政治要略に記されている。
 
 ※
 「ご隠居はん、部下なし管理職みたいな。」
 「いや、職名のみで、権限がないのだからね。」
 「上総介信長みたいな」
 「少なくとも名誉ではあるのだよ。」
 
 Wikiを見てみると面白い
 政治要略
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E4%BA%8B%E8%A6%81%E7%95%A5
 揚名介:名を揚げるための介って露骨な...
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8F%9A%E5%90%8D%E4%BB%8B
 
 官位相当表:こちらのサイトも面白い
 http://www.nobunaga-lab.com/hall/furoku/kanisoutouhyou.html
2010/04/10(Sat)

第百九十七段 諸寺の僧のみにもあらず
 諸寺(シヨジ)の僧のみにもあらず、定額(ヂヤウガク)の女孺(ニヨジユ)といふ
 事、延喜式(エンギシキ)に見えたり。すべて、数(カズ)定まりたる公人(クニン)
 の通号(ツウガウ)にこそ。
 
 ※
 諸寺の僧だけでなく、下級の女官なども、延喜式に定めがある。どれも、定員のある役
 人の肩書だそうだ。
 
 ※
 「ご隠居はん、今と同じですね。どの部署に何人とか。」
 「こういう段を見ると、徒然草は教育用に書かれたという説も理解できるね。」
2010/04/10(Sat)

第百九十六段 東大寺の神輿
 東大寺の神輿(シンヨ)、東寺の若宮(ワカミヤ)より帰座(キザ)の時、源氏の公卿
 (クギヤウ)参られけるに、この殿(トノ)、大将(ダイシヤウ)にて先を追はれける
 を、土御門相国(ツチミカドノシヤウコク)、「社頭(シヤトウ)にて、警蹕(ケイヒ
 ツ)いかゞ侍るべからん」と申されければ、「随身(ズヰジン)の振舞は、兵杖(ヒヤ
 ウヂヤウ)の家が知る事に候」とばかり答へ給ひけり。
 
 さて、後に仰せられけるは、「この相国(シヤウコク)、北山抄(ホクザンセウ)を見
 て、西宮(セイキウ)の説をこそ知られざりけれ。眷属(ケンゾク)の悪鬼(アク
 キ)・悪神恐るゝ故に、神社にて、殊(コト)に先を追ふべき理あり」とぞ仰せられけ
 る。
 
 ※
 東大寺の神輿が、東寺の若宮より戻って来る時のこと、源氏の公卿も参られるので、久
 我通基が、大将として先払いをしていると、土御門相国より「社頭で、警蹕するのはい
 かがなものか」と言われたので、「随身の振舞は、武官の家のみが知る事ですので」と
 だけ答えたそうだ。
 
 さて、後にこの事について、「この相国は、北山抄を見て、西宮記の説をご存じなかっ
 たのだ。眷属の悪鬼、悪神を恐れるため、神社では、とりわけ先払いが必要なのだ」と
 おっしゃった。
 
 ※
 「ご隠居はん、前段の久我内大臣が健康な時のお話です。これは細やかな気遣いなので
 しょうか。」
 「そう思った方が良さそうだね。深く考えるとかなり嫌な奴になるからね。」
 「それにしても何時の話なのでしょう。兼好が六位蔵人になったのが1301年ですから土
 御門相国の時代。その頃、無官の久我通基から直接聞く機会があったのでしょうか。前
 半は久我通基が先払いなんてやってるぐらいですから両者とも若い頃の話しなのか。」
 「だから深く考えない。」
 
 土御門相国:土御門定実(1241-1306)のこと。1301-1302に太政大臣。村上源氏。
 北山抄、西宮記:有職故実の書。
2010/04/03(Sat)

第百九十五段 或人、久我縄手を通りけるに、
 或人(アルヒト)、久我縄手(コガナハテ)を通(トホ)りけるに、小袖(コソデ)に
 大口(オホクチ)着たる人、木造りの地蔵(ヂザウ)を田の中の水におし浸して、ねん
 ごろに洗ひけり。心得難(ココロエガタ)く見るほどに、狩衣(カリギヌ)の男二三人
 (フタリミタリ)出で来て、「こゝにおはしましけり」とて、この人を具(グ)して去
 (イ)にけり。久我内大臣(コガノナイダイジン)殿にてぞおはしける。
 
 尋常(ヨノツネ)におはしましける時は、神妙(シンベウ)に、やんごとなき人にてお
 はしけり。
 
 ※
 ある人が、久我の畦道を通り掛かった時、小袖に大口という姿の人が、木でできた地蔵
 を田んぼの水に押し浸して、丁寧に洗っていた。なんだろうと見ていると、狩衣姿の男
 が二、三人やって来て、「ここに居られましたか」と、この人を連れ去ったそうだ。久
 我内大臣殿だったそうだ。
 
 現役でご活躍の頃は、大変、立派な方であられた。
 
 ※
 「ご隠居はん、え...良く言えば奇行。」
 「全然えぇことないがな。」
 「仕事のプレッシャーとか色々あるんですかねぇ。」
 「原因は分からないけれど、昔からこういう風になってしまう事があるんだね。」
 
 久我内大臣:源通基(1240-1309)のこと。1288年内大臣になるが、すぐ辞任。
       この時、健康上の問題があったのでしょうか。
2010/03/27(Sat)

第百九十四段 達人の、人を見る眼は
 達人(タツジン)の、人を見る眼(マナコ)は、少しも誤(アヤマ)る所あるべから
 ず。
 
 例へば、或人の、世に虚言(ソラゴト)を構(カマ)へ出(イダ)して、人を謀(ハ
 カ)る事あらんに、素直(スナホ)に、実(マコト)と思ひて、言ふまゝに謀らるゝ
 人あり。余りに深く信を起(オコ)して、なほ煩(ワヅラ)はしく、虚言を心得添
 (ココロエソ)ふる人あり。また、何(ナニ)としも思はで、心をつけぬ人あり。ま
 た、いさゝかおぼつかなく覚えて、頼むにもあらず、頼まずもあらで、案じゐたる人
 あり。また、実(マコト)しくは覚えねども、人の言ふ事なれば、さもあらんとて止
 (ヤ)みぬる人もあり。また、さまざまに推(スヰ)し、心得たるよしして、賢げに
 うちうなづき、ほゝ笑(ヱ)みてゐたれど、つやつや知らぬ人あり。また、推し出
 (イダ)して、「あはれ、さるめり」と思ひながら、なほ、誤りもこそあれと怪しむ
 人あり。また、「異(コト)なるやうもなかりけり」と、手を拍(ウ)ちて笑ふ人あ
 り。また、心得たれども、知れりとも言はず、おぼつかなからぬは、とかくの事な
 く、知らぬ人と同じやうにて過ぐる人あり。また、この虚言の本意を、初めより心得
 て、少しもあざむかず、構(カマ)へ出したる人と同じ心になりて、力を合(ア)は
 する人あり。
 
 愚者(グシヤ)の中(ウチ)の戯(タハブ)れだに、知りたる人の前にては、このさ
 まざまの得たる所、詞(コトバ)にても、顔にても、隠れなく知られぬべし。まし
 て、明らかならん人の、惑(マド)へる我等を見んこと、掌(タナゴコロ)の上(ウ
 ヘ)の物を見んが如し。但(タダ)し、かやうの推し測りにて、仏法(ブツポフ)ま
 でをなずらへ言ふべきにはあらず。
 
 ※
 賢人と呼ばれる人の、人を見極める目というものは、少しも誤る事が無い。
 
 例えば、ある人が、世に嘘の出来事を広め、人を騙そうとすると、素直に、本当だと
 思い、言われるがまま騙される人がいる。深く信じ込んでしまい、さらに尾鰭を付
 け、嘘を補強してしまう人もいる。また、何も感じず、無関心な人もいる。また、
 はっきりとは理解できず、信じるでもなく、信じないでもなく、不安に思っている人
 もいる。また、本当だとは思っていないのに、人の言う事だからと、そうなんだろう
 なと否定しない人もいる。また、色々と考えて、分かった気になって、大げさにうな
 づいて、微笑んではいるけれど、全く気付いていない人もいる。また、考えた末
 「あぁ、こういうことか」と思いながら、でも、間違いかもしれないと疑う人もい
 る。また、「間違いないでしょう」と、手を打って笑う人もいる。また、分かっては
 いても、何も言わず、不審に思っているだけで、特にどうするでもなく、知らない人
 と同じように見える人もいる。また、この嘘の本意を、最初から理解し、少しも恐れ
 ず、嘘を広めた人に便乗して、協力する人もいる。
 
 おろか者の仲間内の戯れですら、知っている人の前では、これら様々な考えが、言葉
 からでも、表情からでも、隅々まで見透かされてしまう。まして、賢明な人であれ
 ば、迷える者共を見透かすことなど、手のひらにある物を見るようなものだ。ただ
 し、こんな推し測り方で、仏法までを同列に見てはならない。
 
 ※
 「ご隠居はん、宗教を信じていない人なら、宗教も同列ですよ。まぁここは兼好さん
 が言うように宗教は除いて考えます。いちばん似ている状況は、今の政治でしょう
 か。」
 「まぁ政治を頭から嘘と決めつける事もどうかとは思うがね。嘘というより無理だっ
 たとも言えるし。」
 「最初から無理、つまり嘘と評価する人もいますし。」
 「どちらにしても騙すつもりはなかったと思いたいね。」
 「え〜っ、騙されてますよ。大勢がこの段の人たちのようにね。騙されないようにす
 るには、どうすればいいですか。」
 「賢人を探す事かな。」
 「結局...誰を信じればいいのやら。」
2010/03/20(Sat)

第百九十三段 くらき人の、人を測りて
 くらき人の、人を測(ハカ)りて、その智(チ)を知れりと思はん、さらに当(アタ)
 るべからず。
 
 拙(ツタナ)き人の、碁(ゴ)打つ事ばかりにさとく、巧(タク)みなるは、賢(カシ
 コ)き人の、この芸におろかなるを見て、己(オノ)れが智に及ばずと定めて、万(ヨ
 ロヅ)の道の匠(タクミ)、我が道を人の知らざるを見て、己れすぐれたりと思はん
 事、大きなる誤りなるべし。文字(モンジ)の法師、暗証(アンシヨウ)の禅師(ゼン
 ジ)、互(タガ)ひに測りて、己れに如(シ)かずと思へる、共に当(アタ)らず。
 
 己れが境界(キヤウガイ)にあらざるものをば、争(アラソ)ふべからず、是非すべか
 らず。
 
 ※
 ばか者が、人を推し量って、その能力の程度を知ろうとしても、わかりっこない。
 
 愚か者のくせに、碁だけは理解し、上手だからと言って、教養はあるが、碁が下手な人
 を見て、自分より劣っていると決めつけたり、あらゆる分野の専門家が、自分の分野に
 ついて人が詳しくないのを見て、自分の方が優れていると思うなんてことは、大きな間
 違いだ。読経ばかりの僧と座禅ばかりの僧が、互いを評して、自分より劣っていると
 思ったのなら、どちらも何も理解していない。
 
 自分と違う分野の人と、比べてはならない、優劣をつけてはならない。
 
 ※
 「ご隠居はん、エリート意識というやつですかね。」
 「あぁ...そこまで飛びますか。」
 「違うのですか。」
 「それは、優越する気持ちの出方でしょ。例えば、他人を見下すのではなく、責任感を
 感じるべきってことでしょう。」
 「はぁ。」
 「この段はそこまで言ってないのではないかな。単に自分と他者を理解しなさいと、そ
 の程度ではないかな。」
 「ふむ、なるほど。人を一面で理解するな、ですか。」
2010/03/13(Sat)

第百九十二段 神・仏にも
 神(カミ)・仏(ホトケ)にも、人の詣(マウ)でぬ日、夜(ヨル)参りたる、よし。
 
 ※
 神や仏に、人が詣でない日や夜お参りするのも、いいものだね。
 
 ※
 「ご隠居はん、よく分かる話です。雰囲気が違いますからね。縁日の騒々しいのもいい
 ですけれど、静まり返っているのも格別です。」
 「ふ〜ん」
2010/03/07(Sun)

第百九十一段 夜に入りて、物の映えなし
 「夜(ヨ)に入りて、物の映(ハ)えなし」といふ人、いと口をし。万のものの綺羅
 (キラ)・飾(カザ)り・色ふしも、夜(ヨル)のみこそめでたけれ。昼は、ことそ
 ぎ、およすけたる姿(スガタ)にてもありなん。夜は、きらゝかに、花やかなる装束
 (シヤウゾク)、いとよし。人の気色(ケシキ)も、夜の火影(ホカゲ)ぞ、よきはよ
 く、物言ひたる声も、暗くて聞きたる、用意ある、心にくし。匂(ニホ)ひも、ものの
 音(ネ)も、たゞ、夜ぞひときはめでたき。
 
 さして殊(コト)なる事なき夜、うち更(フ)けて参れる人の、清げなるさましたる、
 いとよし。若きどち、心止(トド)めて見る人は、時をも分(ワ)かぬものならば、殊
 に、うち解(ト)けぬべき折節(ヲリフシ)ぞ、褻(ケ)・晴(ハレ)なくひきつくろ
 はまほしき。よき男(ヲトコ)の、日暮(グ)れてゆするし、女(ヲンナ)も、夜更く
 る程に、すべりつゝ、鏡(カガミ)取りて、顔などつくろひて出づるこそ、をかしけ
 れ。
 
 ※
 「夜になると、物が映えない」という人が居るけれど、違うよね。物の華やかさ・飾
 り・色合いも、夜こそ引き立つんだ。昼だと、簡素で、目立たなくてもいいじゃない。
 夜には、きらびやかで、華やかな装いが、いいと思う。人の姿も、夜の火影で、いい感
 じに見えるし、話し声だって、暗い中で聞く方が、思いがよく伝わって、いいものだ。
 香りも、音楽も、とにかく、夜の方が際立ってくる。
 
 なんて事も無い夜、遅くになってやって来る人の、清らかな姿も、いいものだね。若い
 者同志が、気になって姿を追い掛けたりするのは、時間に関係が無いから、特に、打ち
 融け合いそうな頃には、常に身だしなみには気をつけておくべきだね。いい男が、日が
 暮れてから髪を整えたり、女も、夜が更けてから、席をはずし、鏡を取って、化粧を直
 して戻ってくるというのが、いいのだよな。
 
 ※
 「ご隠居はん、備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖。注意一秒怪我一生。」
 「いつにもまして、なにをゆうとるんや。」
 「インターホンが鳴るので出てみたら、かわいい女の子が立っていた。ちゃんとした格
 好で出れば良かったなぁと後悔するのもつかの間、差し出されたものに目を止めると、
 宗教の勧誘だった。なんだかなぁ。」
 「ほんま、何ゆうとるんや。そんな事はえぇから、はよ本題に。」
 「はい。では。
 昔に比べると、季節感も弱くなりましたけど、時間の違いも随分感じません。」
 「文明のせいやな。」
 「何時だって明るいから、格好がだらしなくなるのでしょうか。」
 「あれは、好みの問題だからね。とは言っても目立っちゃったからね。」
 「はぁ。」
2010/02/27(Sat)

第百九十段 妻といふものこそ
 妻(メ)といふものこそ、男(ヲノコ)の持つまじきものなれ。「いつも独(ヒト)り
 住(ズ)みにて」など聞くこそ、心にくけれ、「誰(タレ)がしが婿(ムコ)に成り
 ぬ」とも、また、「如何なる女(ヲンナ)を取り据ゑて、相(アヒ)住む」など聞きつ
 れば、無下(ムゲ)に心劣りせらるゝわざなり。殊(コト)なる事なき女をよしと思ひ
 定めてこそ添(ソ)ひゐたらめと、苟(イヤ)しくも推(オ)し測(ハカ)られ、よき
 女ならば、らうたくしてぞ、あが仏(ホトケ)と守りゐたらむ。たとへば、さばかりに
 こそと覚えぬべし。まして、家の内(ウチ)を行(オコナ)ひ治めたる女、いと口惜
 (クチヲ)し。子など出(イ)で来て、かしづき愛したる、心憂(ウ)し。男なくなり
 て後、尼(アマ)になりて年寄りたるありさま、亡(ナ)き跡まであさまし。
 
 いかなる女なりとも、明暮添(アケクレソ)ひ見んには、いと心づきなく、憎(ニク)
 かりなん。女のためも、半空(ナカゾラ)にこそならめ。よそながら時々通ひ住(ス)
 まんこそ、年月経(ヘ)ても絶えぬ仲らひともならめ。あからさまに来て、泊(トマ)
 り居(ヰ)などせんは、珍らしかりぬべし。
 
 ※
 妻というものこそ、男は持つべきではない。「ずっと一人住まいでして」なんて聞く
 と、あっぱれ、「誰それの婿になりまして」とか、また、「こういう女を連れて来て、
 一緒に住んでるんだ」なんて聞くと、とにかくがっかりさせられる。どうってことない
 女をいいと思い込んで一緒に居るのだろう、なんて邪推したり、いい女だったら、可愛
 い可愛いと、お姫様扱いしているんだろう。例えてみれば、こんなもんだと想像でき
 る。まして、家庭を切盛りする女なんて、どうしようもない。子供ができて、大切に愛
 してる、見てられないよ。男が亡くなった後、尼になって年をとった姿なんて、みっと
 もない。
 
 どんな女であっても、明けても暮れても顔を合わせていると、うんざりしてきて、嫌に
 なる。女のほうだって、どうしようもないだろう。よそから時々通って来る方が、年月
 が経っても飽きが来ない仲なんじゃないか。突然やって来て、泊ってゆくなんてのが、
 新鮮でいいんじゃないかな。
 
 ※
 「ご隠居はん、長い前置きですね〜。どんな立派な話なのかと思えば。」
 「自己正当化じゃな。」
 「あ...そうか。独身でいる言い訳に、これは使える。」
 「どこで使うんや...。」
2010/02/20(Sat)

第百八十九段 今日はその事をなさんと思へど
 今日(ケフ)はその事をなさんと思へど、あらぬ急ぎ先(マ)づ出で来て紛(マギ)れ
 暮し、待つ人は障(サハ)りありて、頼めぬ人は来たり。頼みたる方の事は違(タガ)
 ひて、思ひ寄らぬ道ばかりは叶(カナ)ひぬ。煩(ワヅラ)はしかりつる事はことなく
 て、易(ヤス)かるべき事はいと心苦し。日々(ヒビ)に過ぎ行くさま、予(カネ)て
 思ひつるには似ず。一年(ヒトトセ)の中(ウチ)もかくの如し。一生の間(アヒダ)
 もしかなり。
 
 予(カネ)てのあらまし、皆違ひ行くかと思ふに、おのづから、違はぬ事もあれば、い
 よいよ、物は定め難し。不定(フシヤウ)と心得ぬるのみ、実(マコト)にて違はず。
 
 ※
 今日はあれをするぞと思っていても、思わぬ急用に振り回され、待っていた人は来ず
 に、頼みもしない人がやって来る。願っていた方の事は実現できず、思ってもいなかっ
 た事ばかり叶う。面倒だなと思っていた事は何の支障もなく、簡単だと思っていた事の
 ほうが難しかったり。日々の暮らしと言うのは、予め思っているようにはいかないもの
 だ。一年を振り返るとこんな感じ。一生だって同じなんだな。
 
 予想したことが、全て裏返しになるのかと思うと、たまたま、違わない事もあるから、
 ますます、予測はできないな。定めはないと思っておけば、間違いない。
 
 ※
 「ご隠居はん、あたりまえじゃないですか。」
 「いやいや、”当たり前だと思った事がそうではない。”って話だよ。」
 「あ、そうか。そうか?」
 「結果は分からないのだから常に用心し努力しなさいと。」
 「そうなのかなぁ。単に徒然しすぎのような気がしますけど...。」
2010/02/07(Sun)

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