週刊徒然草

〜 ご隠居はんとありおーの徒然草 〜

 

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跋文
 這(コ)ノ両帖(リヤウデフ)ハ、吉田ノ兼好法師、燕居(エンキヨ)ノ日、徒然(ト
 ゼン)トシテ暮ニ向ヒ、筆ヲ染メテ情(ジヨウ)ヲ写スモノナリ。頃(コノゴロ)、泉
 南(センナン)ノ亡羊処士(バウヤウシヨシ)、洛(ラク)ノ草廬(サウロ)ニ箕踞
 (キキヨ)シテ、李老(リラウ)ノ虚無(キヨム)ヲ談(ダン)ジ、荘生(サウセイ)
 ノ自然ヲ説キ、且(カ)ツ、暇日(カジツ)ナルヲ以テ、二三子(ニサンシ)ニ対シ、
 戯(タハム)レニ焉(コレ)ヲ講ズ。加之(シカノミナラズ)、後ニ、将(マサ)ニ、
 書(シヨ)シテ以テ工(コウ)ニ命ジ、梓(アヅサ)ニ鏤(キザ)ミテ、夫(カ)ノ二
 三子ニ付(フ)セントス。越(ココ)ニ、句読(クトウ)・清濁以下(セイダクイ
 ゲ)、予(ヨ)ヲシテ之(コレ)ヲ糾(タダ)サシム。予、坐(ソゾロ)ニ、其ノ志
 (ココロザシ)ヲ好(ヨミ)シ、其ノ醜(シウ)ヲ忘レ、卒(ニハカ)ニ校訂(コウテ
 イ)ヲ加(クハ)フルノミ。復(マタ)、其ノ遺逸(ヰイツ)アランコトヲ恐ルヽナ
 リ。
 
 慶長癸丑(ケイチヤウキチユウ)ノ仲秋(チユウシウ)ノ日黄門(クワウモン)
 
 光広(ミツヒロ)
 
 ※
 この二巻は、吉田の兼好法師が、家でくつろいでいた時、退屈しのぎに、筆を取って思
 い浮かんだ事を書き留めたものだ。近頃、岸和田の三宅寄斎が、都にある草庵でのんび
 りと、老子の虚無について論じたり、荘子の自然を説いたり、かつ、時間があれば、数
 人の弟子に向かって、戯れにこれを講義したそうだ。それだけではなく、後に、正に、
 書物にしようと職人に頼み、版木に刻んで、その弟子たちに与えることにした。より良
 くしようと、句読点・清濁音その他、予め編集していたようだ。私は、何とはなしに、
 その志に共感し、自身の未熟さも忘れ、ただ校訂を加えただけなのだ。それにつけて
 も、その書き洩らしの無さには感嘆するばかりであった。
 
 一六十三年の仲秋の日 中納言
 
 烏丸光広
 
 ※
 「ご隠居はん、これで最後となりました。」
 「うむ。」
 「この最後の文を読んで驚きました。徒然草が現代まで残った事に、私の住んでいる地
 域にゆかりの有る人が関わっていたなんて。」
 「偶然にしても驚きだね。それにしても、よく最後まで続けられたのう。」
 「これも、ご隠居はんのお陰です。一人だったら途中で投げ出していましたよ。お礼申
 し上げます。」
 
 
 亡羊処士:三宅寄斎(1580-1649)のこと。
 http://kotobank.jp/word/%E4%B8%89%E5%AE%85%E5%AF%84%E6%96%8E
2010/12/26(Sun)

第二百四十三段 八つになりし年
 八(ヤ)つになりし年、父に問ひて云はく、「仏(ホトケ)は如何(イカ)なるものに
 か候ふらん」と云ふ。父が云はく、「仏には、人の成(ナ)りたるなり」と。また問
 ふ、「人は何として仏には成り候ふやらん」と。父また、「仏の教(ヲシヘ)によりて
 成るなり」と答ふ。また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける」と。また答
 ふ、「それもまた、先の仏の教によりて成り給ふなり」と。また問ふ、「その教へ始め
 候ひける、第一の仏は、如何なる仏にか候ひける」と云ふ時、父、「空よりや降りけ
 ん。土よりや湧(ワ)きけん」と言ひて笑ふ。「問ひ詰められて、え答へずなり侍り
 つ」と、諸人(シヨニン)に語(カタ)りて興(キヨウ)じき。
 
 ※
 八つになった年、父に聞いてみた、「仏とはどのようなものなのでしょう」と問う。父
 が言うには、「仏には、人から成るのだよ」と。続けて問う、「人はどうやって仏に
 成ったのでしょう」と。父はまた、「仏の教えによって成るのだよ」と答える。更に問
 う、「教えた仏には、何が教えたのでしょう」と。父は、「空から降りて来たのか、土
 の中から湧いてきたのかもな」と言って笑っていた。「問い詰められて、答えに困りま
 したよ」と、周りの人に嬉しそうに語っていたそうだ。
 
 ※
 「ご隠居はん、空から降りて来たのは、バルカン星人ですよ。きっと!」
 「言うと思っていたわい。最後なんだから真面目にいこうじゃないか。」
 「そうですか。では、そうですねぇ。人は誰でも神童の時期がある。」
 「まぁ親ばかと言うやつじゃな。」
 「でも、自分にもそういう時期があったと、自慢のようでありながら、ちょっと寂しさ
 も感じますね。」
2010/12/26(Sun)

第二百四十二段 とこしなへに違順に使はるゝ事は
 とこしなへに違順(ヰジユン)に使はるゝ事は、ひとへに苦楽(ラク)のためなり。楽
 (ラク)と言ふは、好(コノ)み愛(アイ)する事なり。これを求むること、止(ヤ)
 む時なし。楽欲(ゲウヨク)する所、一つには名(ナ)なり。名に二種(ニシユ)あ
 り。行跡(カウセキ)と才芸(サイゲイ)との誉(ホマレ)なり。二つには色欲(シキ
 ヨク)、三つには味(アヂハ)ひなり。万(ヨロヅ)の願ひ、この三つには如(シ)か
 ず。これ、顛倒(テンダウ)の想(サウ)より起りて、若干(ソコバク)の煩(ワヅ
 ラ)ひあり。求めざらんにには如(シ)かじ。
 
 ※
 何時まで経っても思うように生きられないのは、苦楽があるからだ。楽と言うのは、好
 んで求めるものだ。これを求める気持ちに、終わりは無い。その中の第一は名声だね。
 名声には二種類ある。経済的なものと学芸に関するものの評価だ。第二には性欲、第三
 が食欲だね。他にももっと有るけれど、この三つほどではない。これは、煩悩から生ず
 るもので、多くの苦をもたらす。求めないほうがいいということだ。
 
 ※
 「ご隠居はん、行跡ってどういう意味なのか迷いました。人としての評価なのかとも思
 いましたが、お金に関することとしました。」
 「真逆じゃないか。」
 「欲と言ったらお金を外す訳にはいかないじゃないですか。」
 「それはそうじゃがな」
 「でも、最近の日本人には貪欲さがないとか言われますけど、兼好さんが見たら、さぞ
 や喜ぶのではと思ってしまいますね。」
2010/12/25(Sat)

第二百四十一段 望月の円かなる事は
 望月(モチヅキ)の円(マド)かなる事は、暫(シバラ)くも住(ヂユウ)せず、やが
 て欠(カ)けぬ。心止(トド)めぬ人は、一夜(ヒトヨ)の中(ウチ)にさまで変る様
 (サマ)の見えぬにやあらん。病(ヤマヒ)の重(オモ)るも、住する隙(ヒマ)なく
 して、死期(シゴ)既に近し。されども、未(イマ)だ病急(キフ)ならず、死に赴
 (オモム)かざる程は、常住平生(ジヤウヂユウヘイゼイ)の念に習ひて、生(シヤ
 ウ)の中に多くの事を成(ジヤウ)じて後(ノチ)、閑(シヅ)かに道を修(シユ)せ
 んと思ふ程に、病を受けて死門(シモン)に臨む時、所願一事(シヨグワンイチジ)も
 成せず。言ふかひなくて、年月(トシツキ)の懈怠(ケダイ)を悔(ク)いて、この度
 (タビ)、若(モ)し立ち直りて命(イノチ)を全(マツタ)くせば、夜(ヨ)を日
 (ヒ)に継ぎて、この事、かの事、怠(オコタ)らず成(ジャウ)じてんと願ひを起す
 らめど、やがて重(オモ)りぬれば、我(ワレ)にもあらず取り乱して果てぬ。この類
 (タグイ)のみこそあらめ。この事、先(マ)づ、人々、急ぎ心に置くべし。
 
 所願(シヨグワン)を成じて後(ノチ)、暇(イトマ)ありて道に向(ムカ)はんとせ
 ば、所願尽(ツ)くべからず。如幻(ニヨゲン)の生(シヤウ)の中(ウチ)に、何事
 (ナニゴト)をかなさん。すべて、所願皆妄想(ミナマウザウ)なり。所願心に来たら
 ば、妄信迷乱(マウシンメイラン)すと知りて、一事(イチジ)をもなすべからず。直
 (ヂキ)に万事(バンジ)を放下(ハウゲ)して道に向(ムカ)ふ時、障りなく、所作
 (シヨサ)なくて、心身(シンジン)永く閑(シヅ)かなり。
 
 ※
 満月が真ん丸なのは、一瞬の事で、すぐに欠け始める。意識しないと、一夜のうちに起
 こる大きな変化に気付くことはない。病の状態も、とどまる事は無く、何れ死期を迎え
 る。されども、健康であって、死など想像できない時には、永遠にこのままであるかの
 ように生き、人生の中で多くの事を成し遂げた後、ゆっくりと仏道修行をしようと思う
 のだけれど、病気になり死を意識して、その願いがかなわない事を知ることとなる。考
 えても仕方がないことだけど、無駄に月日を過ごした事を悔いて、もし、回復して命を
 長らえる事ができたなら、昼夜を問わず、あの事、この事、怠けずに達成しようと思う
 ものだけど、やがて死期が近づくと、自分を見失ない取り乱して最期を迎えることとな
 る。この様な例は沢山ある。この事をこそ、人々は、心しなければならないのだ。
 
 やりたい事を終わらせた後で、時間が出来たら修行をしようとしても、やりたい事は無
 くならない。はかない人生の中で、何を成すべきなのか。すべての、欲望は妄想なの
 だ。やりたい事が出来たなら、それは妄想に取り付かれたと考え、実現させようなどと
 思ってはならない。今すぐ全てを打ち捨てて修行へ励めば、滞りなく、なにもしなくて
 も、平穏な死を迎える事ができるのだ。
 
 ※
 「ご隠居はん、またまたダークな兼好さんです。この人躁鬱が激しいような。」
 「いや、いや、人ってそんなものじゃないかな。もしかして、人間には能天気な奴と根
 暗な奴しかおらんと思っているのかい。」
 「いえ、そんな事は思いませんが...」
 「が、なんじゃ。」
 「もう少し、普通は振幅の幅が小さいような気がします。」
 「つまらんのう。」
 「つまらん...ですか。」
 「月のように満ち欠けが大きい方がきれいなもんじゃよ。」
 「見ている分には、そうなんですがね。」
2010/12/19(Sun)

第二百四十段 しのぶの浦の蜑の見る目も所せく
 しのぶの浦(ウラ)の蜑(アマ)の見る目も所(トコロ)せく、くらぶの山も守(モ)
 る人繁(シゲ)からんに、わりなく通(カヨ)はん心の色(イロ)こそ、浅からず、あ
 はれと思ふ、節々(フシブシ)の忘れ難(ガタ)き事も多からめ、親・はらから許(ユ
 ル)して、ひたふるに迎(ムカ)へ据(ス)ゑたらん、いとまばゆかりぬべし。
 
 世にありわぶる女の、似げなき老法師(オイボフシ)、あやしの吾妻人(アヅマウド)
 なりとも、賑(ニギ)はゝしきにつきて、「誘(サソ)う水あらば」など云ふを、仲人
 (ナカウド)、何方(イヅカタ)も心にくき様(サマ)に言ひなして、知られず、知ら
 ぬ人を迎(ムカ)へもて来(キ)たらんあいなさよ。何事(ナニゴト)をか打ち出
 (イ)づる言(コト)の葉(ハ)にせん。年月(トシツキ)のつらさをも、「分(ワ)
 け来(コ)し葉山(ハヤマ)の」なども相語(アヒカタ)らはんこそ、尽(ツ)きせぬ
 言(コト)の葉(ハ)にてもあらめ。
 
 すべて、余所(ヨソ)の人の取りまかなひたらん、うたて心づきなき事、多かるべし。
 よき女ならんにつけても、品下(シナクダ)り、見にくゝ、年(トシ)も長(タ)けな
 ん男は、かくあやしき身(ミ)のために、あたら身をいたづらになさんやはと、人も心
 劣(ココロオト)りせられ、我が身は、向(ムカ)ひゐたらんも、影恥(カゲハヅ)か
 しく覚えなん。いとこそあいなからめ。
 
 梅の花かうばしき夜(ヨ)の朧月(オボロヅキ)に佇(タタズ)み、御垣(ミカキ)が
 原(ハラ)の露分(ツユワ)け出でん有明(アリアケ)の空も、我(ワ)が身様(ミザ
 マ)に偲(シノ)ばるべくもなからん人は、たゞ、色好まざらんには如(シ)かじ。
 
 ※
 逢瀬は人の目も気になるし、夜道も人が多くて困るけど、それでも通うのは恋しいから
 なんだ、そうやっているうちに、思いがけない出来事に遭遇したりして、忘れ難い思い
 出が沢山できるのだけど、家族の許しを得て、結婚したら、照れくさい思い出に変わる
 んだよ。
 
 婚期を逃した女が、親子ほど年の違う法師や、素性のわからない田舎者なんかが、言い
 寄って来るにつけ、「もらってくれるのでしたら」などと言うのだけれど、仲人が、周
 りに如何にも良い話のように言ったって、知らない者同士が一緒になるなんてつまらな
 いと思うよ。何をもとに会話をするのだろう。あの年月があればこそ「分け来し葉山
 の」なんて歌について語らったりして、会話も尽きないというものなのに。
 
 大体、他人が取りまとめた話には、心遣いが無い事が、多いと思うよ。よい女であれば
 ある程、品が無く、顔も悪く、年もずっと上の男は、こんな自分のために、人生を捧げ
 させるのかと、気が咎め、自分の不甲斐なさに、向かい合う事もできず、頭が上がらな
 い。これではどちらにもよくないよ。
 
 梅の花の香る夜に朧月を見上げたり、庭の露を分け入って明け方の空見る、そんな自分
 を想像できないような人は、恋なんてしないほうがいいだろうけどね。
 
 ※
 「ご隠居はん、こういう歌にかけた文章は難しいです。」
 「これは仕方がない。」
 「ですから今回はほとんど意訳という感じになりました。」
 「ふむ、それで。」
 「兼好さん、若いなぁ。」
 「それだけかい...。」
2010/12/18(Sat)

第二百三十九段 八月十五日・九月十三日は
 八月十五日(ハツキジフゴニチ)・九月十三日(ナガヅキジフサンニチ)は、婁宿(ロ
 ウシユク)なり。この宿、清明(セイメイ)なる故に、月を翫(モテアソ)ぶに良夜
 (リヤウヤ)とす。
 
 ※
 八月十五日・九月十三日は、婁宿がよく見える。この時期は、空が澄み渡り、月を観る
 にはもってこいなんだな。
 
 ※
 「ご隠居はん、十五夜、十三夜は昔からよく晴れたのですね。」
 「そういう事だね。」
 
 
 婁宿:二十八宿のひとつ。西洋占星術では12宮ですが、中国の占星術を採用してい
    た日本では、二十八の宿を用いていた。婁宿は牡羊座の三星の辺りだそうです。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A9%81%E5%AE%BF
2010/12/18(Sat)

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