某(ナニガシ)とかやいひし世捨人(ヨステビト)の、「この世のほだし持たらぬ身  に、ただ、空の名残のみぞ惜しき」と言ひしこそ、まことに、さも覚えぬべけれ。     ※  何とかという名の世捨て人が、「この世の何物もほしいとは思わない、ただ、空の移  ろいには名残惜しさを感じるね」と言ったんだけど、ほんと、そう思うよ。    ※  「ご隠居はん、この人、詩人ですね。」  「やっとわかったかね。」  「ただの嫌味なおっさんかと思ってました。」  「これこれっ。」  「ところでこの段は、第五段の「配所の月、罪なくて見ん事」に似てませんか。」  「たまには空を見上げてご覧なさい。きっと気持ちがわかるから。」
 
  2006/02/15(Wed) 
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